補助治療について/補助治療の種類と適応

1 放射線療法
患部に放射線を照射する局所療法です。
【適応】
温存術の場合は、温存した乳房に放射線治療を行うのが原則です。
断端陽性で追加手術をしない場合は、局所への追加照射が行われます。
センチネルリンパ節生検陽性でリンパ節郭清手術を行わない場合にも、手術の代わりにリンパ節への放射線照射が選択されることがあります。
乳房切除の場合であっても、再発リスクが高いと予想される場合(4個以上のリンパ節転移および腫瘍径5cm以上または皮膚や筋肉に浸潤するような場合)には、胸壁・リンパ節領域照射を行うことで若干生存率が上がることが報告されていますが、リンパ浮腫の頻度も増えます。
【治療方法】
温存療法の場合には、主にリニアック(ライナック)という機械を使って、1回2グレイを25回、合計50グレイを照射します。基本的に週5日×5週間のスケジュールです。病院により異なる場合があります。1回の所要時間は数分です。術後、傷が落ち着いたら通院で照射を始めますが、化学療法が先行する場合もあります。
【副作用】
放射線性肺炎や皮膚炎、倦怠感などの合併症が出ることがあります。リンパ節へ照射した場合には、リンパ浮腫が起きる可能性もあります。
 
2 内分泌療法
いわゆるホルモン療法です。全身療法です。
【適応】
ホルモンレセプターが陽性の場合に適応となります。
【治療方法】
(a)抗エストロゲン剤:乳がん補助治療の最も標準的な薬としてタモキシフェン(内服薬)などがあります。基本の服用期間は5年です。
(b)LH-RHアゴニスト製剤:卵巣機能を抑制する注射剤です。基本は2年間で、閉経前の人が適応となります。
(c)アロマターゼ阻害剤:アナストロゾールなど、閉経後の人が適応となる内服薬です。タモキシフェンの代わりに使用します。
【副作用】
比較的軽度の場合が多いですが、無月経や生理不順、更年期様症状などが出ます。
 
3 化学療法
いわゆる抗がん剤です。点滴や経口剤による全身療法です。
【適応】
ホルモン剤が無効な症例や再発リスクが高い場合に適応となります。
【治療方法】
複数の薬品を使用する多剤併用療法が一般的です。薬剤の略称(下表参照)を組み合わせた呼称がついています。
(a)AC、EC、FAC、FECなど、アンスライサイクリン系:3週間または4週間を1コースとし、4〜6コース
(b)パクリタキセル、ドセタキセルなどタキサン系:3週間または4週間を1コースとし、4コースを他の治療(AC4コースなど)に追加する
(c)CMF:4週間ごとに6コース
【副作用】
脱毛、消化器障害、骨髄抑制などの副作用が出ますが、薬によって、また人によっても出方はいろいろあります。
一般名(成分名) 略称 商品名
フルオロウラシル 5−FU
メトトレキサート メソトレキセート
シクロホスファミド エンドキサン
塩酸ドキソルビシン(アンスラサイクリン系)
(慣用名:アドリアマイシン)
アドリアシン
塩酸エピルビシン(アンスラサイクリン系) ファルモルビシン
パクリタキセル(タキサン系) タキソール
ドセタキセル水和物(タキサン系) タキソテール
 
4 分子標的治療
新しい治療法である分子標的薬による薬物療法です。全身療法です。
【適応】
HER2が強陽性の場合に適応となります。
【治療方法】
トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を3週間に1回、1年間、点滴により投与します。原則として抗がん剤の後に行います。
【副作用】
発熱、悪寒、心障害など。

《補足事項》
卵巣機能抑制の手段として、薬剤(LH-RHアゴニスト製剤)のほかに、外科的切除、放射線照射が選択される場合もまれにあります。
これらの補助治療を選択する場合に、最も参考とされるのは、
早期乳がんの初期治療に関する国際会議で合意された推奨事項です。  → 詳細