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・ VOL-Netについて〜活動の記録〜
■実施日 2006年5月28日(日)午後2時〜4時半
■場所 目黒区平町エコプラザ 4階 活動室
■テーマ 「乳がんと放射線療法」
■講師 神奈川県立がんセンター放射線治療科
山下 浩介 先生
■参加者数 43人
5月28日(日)、目黒区平町エコプラザにて、神奈川県立がんセンターの山下浩介先生を講師にお迎えして「乳がんと放射線治療」の勉強会を行いました。放射線治療をメインテーマとした勉強会は初めての試みでした。午前中は激しい雨に見舞われた日でしたが、40人強の人数が集まり、VOL-Netの勉強会としてはやや小ぶりのアットホームな会となりました。

勉強会のトピックは「放射線治療の現状」「放射線と放射線治療の基礎知識」から始まり、「放射線治療の実際」、乳がんでもっともよく使われる治療の1つである「乳房温存手術後の放射線治療」、「最近の放射線治療の取り組み」、「再発・転移と放射線治療」などが取りあげられました。

放射線治療は、乳がんのほか肺がん、婦人科系のがん(子宮頚がんなど)、頭頚部がん、食道がんなどで行われています。放射線治療の大きな利点は「機能、形態の温存が可能」なことです。例えば甲状腺のがんなどでは、手術では声が出なくなるなどの後遺症がありますが、放射線治療により「切らずに治す」ことで発声機能の温存が可能になります。乳がんにおいても、放射線治療と組み合わせることにより乳房温存手術が可能になったと言うことができます。

また、放射線治療の基礎知識として大事なことの1つが、「放射線とは光の一種である」ということです。光は波長により、赤外線、可視光線、紫外線などに分けられますが、エックス線やガンマ線などの放射線も波長が違うけど同じ光なのです。

ところで、放射線治療というと「1回の治療にかかる時間はごく短いのに、毎日通わなくてはいけないのが面倒」といったイメージがあるかと思いますが、これにはちゃんと理由があります。
正常な細胞とがん細胞の大きな違いとして「正常細胞は、自分で傷を治す能力がある」ということがあります。が、がん細胞にはその能力がないのです。
放射線照射により、細胞のDNAは傷つけられます。しかし正常細胞はその傷を時間をかけて治すことができるのです。正常細胞が傷を治す時間が取れるように、ゆっくり時間をかけて治療のための照射が行われます。その一方で、がん細胞にはダメージだけがたまっていきます。がん細胞は自力で細胞に受けた傷を治すことができないからです。そして、ついには細胞が死に至ります。この話は筆者にとっては非常に「目からウロコ」が落ちるものでした。

放射線治療の副作用については、乳がんの乳房温存手術後の治療の場合に比較的よく見られるものは「皮膚炎」であり、照射後10日ごろくらいがピークとなるのでその対処法について、またごく稀に「放射性肺炎」が起こるという話もありました。

また、最近の放射線治療の取り組みとして、ピンポイント照射の技術が進んでいること、ガンマナイフやサイバーナイフについて、高度先進医療としての粒子線治療についての紹介もありました。
再発、転移と放射線治療については、放射線治療は病状の進行を抑え、痛みを取る治療法として行われていること、患者さんの状態によってオーダーメイドの治療法となること、放射線治療は高齢者や状態の悪い患者さんへも行うことのできる治療法の1つであることが紹介されました。

2時間近い講義のあとは休憩をはさみ、活発な質疑応答タイムとなりました。折から天候も急に回復したせいか、会場も熱気を帯びたまま閉会となりました。
「放射線治療」については、これまで漠然としたイメージしかなかったのですが、今回の勉強会を機に、治療法の基礎や副作用の出方、その対処法などをしっかりと整理することができました。これから治療に臨まれる方にとっても心強いお話になったのではないかと思います。

= 講師ご紹介 =

山下 浩介  先生
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放射線治療医
防衛医科大学医学部卒
自衛隊中央病院、国立がんセンタ−などを経て現在に至る。
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〜山下先生からのメッセージ〜
手術・放射線・抗がん剤が、がん治療の三本柱と呼ばれています。しかし、これまでのがん治療は、どうも外科重視の傾向にあったように思うのは、私だけではないと思います。近年、患者主体の医療が求められています。がん治療の評価も、5年生存率などという医療者側からの量的な評価だけではなく、患者さんの視点に立った質的な評価、すなわちQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生命や生活の質)が重要となってきました。機能や形態の温存を目指す放射線治療が見直されてきているのは、その一端と言えます。がん患者さん個人個人にとって、望ましいがん治療というのはどういうものか、皆さまと一緒に、放射線治療を中心に考えていけたらと思っています。

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